shibuya slow stream vol.18「好運」ふりかえり考察トーク
イベントを実施して、おしまい。それは、「ビルを作っておしまい」の街づくりとどこか似てきます。shibuya slow streamは、そうであってはなりません。企画や準備に心を費やして迎えつつ、その成果をどうやって積み重ねていけるか!?というところが大事なはず。というわけで、心に留めておいたり、次に活かしていくための手応えや感触って何だったの!?それを一同でふりかえって考察していく時間も大切にしています。ここでは、その一部を当日の様子とともにご紹介します。
今回のテーマ:「好運」
「偶然のより良い出会いが訪れる」というものは、まさにあるべき都市像を表しているように思いますが、運というものを良し悪しに振り分けているものが何なのかというところに、不思議さを感じます。
例えば、路上で奏でられるものが時にそうであるように、街なかの雑踏や喧騒といった想定外を味方につけてしまうような音楽というものがあります。極端なことを言ってしまえば、ノイズキャンセリングならぬ、ノイズウェルカム!?な音楽のスタイルだってあるはずです。
shibuya slow streamの会場は、渋谷の駅近くという立地にしては珍しく、ゆっくりと座ることができる場所がたくさんあります。「果報は寝て待て」を実践するにはぴったりかもしれません。
みんなでどうにかすることの回復
-slow streamは4年目に突入しましたね。
なんか色々ありましたけど、まあ、色々あることのほうが大事ですしね。
-妙に意味深な言い方しますね。
いや、その、想いはそんなに変わってないじゃないですか。で、その想いにはまっすぐでありつつも、歩みはジグザグなほうが自然だなって。
-それはそうですね。それで、イベント全体のデザインも一新したという。
そう。デザインだけでなくって、実行委員会形式というスタイルで、推進体制も拡充されましたね。slow streamって結局、「みんなでどうにかこうにかしていく」という営みを回復していくようなもんですからね。
-ん?どういうことですか?
マネジメントという⾔葉がありますけど、それって本来、管理を意味するものではないんですね。管理はコントロール。
-え?ああ。
英語のManagementって、「do something difficult」「deal with problems」というもので、「みんなでどうにかこうにかしていく」というニュアンスが近いのだそうです。どうにもならないものに対して、みんなでどうにかこうにかしていって、少しでも良い⽅向になるように動いていく。マネジメントという営みはそういうニュアンスがあるらしいんです。なんか、今の社会って、「みんなでなんとかする」っていうことを諦めて誰かに丸投げしちゃうみたいなことが多いと思うんですよね。あるいは、余白がなくギチギチに思惑通りにしようとして息苦しくなるか、どちらか。
-なんとなく言いたいことわかりますけど。
困りごとがあれば、みんなでどうにかしていくし、良い兆しがあれば、それをみんなで膨らましていく。そういうことを、いろんな立場のメンバーが寄り合ってできたら最高じゃないですか。
-slow streamの会議、いつも盛り上がりますよね。
文化人類学者の猪瀬洸平さんが、参加すること自体が面白いお祭りのような会議ってあっても良いよねということを言っていたんですが、まさにそういうことで、基本的には、きっと愉しい仕事って、愉しい会話から生まれると思うんですよ。
OMK(YOUNG-G、MMM、Soi48)
エスカレーターの向こうは大きな交差点
ぽんぽこ山(テンテンコ、チャーハン、カントリー田村、馬場正道、tegadeteru)
会場である稲荷橋広場は気持ちのいい夜風が通る
背中を預けるようにして生まれる未来
-そういうことって、今回のテーマである「好運」となにかつながるんですか?
えっと、きっとつながるはずなんですけどね。なんというか、そういうこと手繰り寄せたくって、slow streamを続けているのかもしれません。
-え、「笑う門には福来る」っていうことですか。
あははは。きっとそうなんでしょうね。
-とはいえ、もうすこし聞いてもよいですか?
なんか良く分からないけど、ワクワクしちゃうとか、きっとあっちのほうが面白いに違いないとか、それこそ、あそこらへんに探していたレコードがあるかもしれないとか、あの人と何か一緒に取り組めたら嬉しいとか、なんかそういう良い兆しみたいなものを感じることってあるじゃないですか。
-ありますね。
それを細かく説明するとなるとなんか萎えたりもするんだけど、でも、そういう好運を願って祈って、賭けていくような生き方というか、あり方ってあるじゃないですか。もちろん、ときには失敗して傷だらけになることもあるし、傷つけてしまうこともあるけど。
-はあ。
そういう賭けをみんなで愉しめたり、ゆるしあえたら最高だし、素直な気持ちで言えば、人は賭けられると嬉しいし頑張れたりするじゃないですか。
-ああ。
託し託され、賭け賭けられる。そういうような気持ちが健やかに生まれたり重なっていくことって、なんか良いと思うんですよね。
-また熱いですね。
そうそう。ついつい熱くなっちゃうんですけど、あまり前のめりになり過ぎたり、握ろう掴もうって力み過ぎるのも良くないんで、まさにスローに「果報は寝て待て」をのんびりできたら良いなって思います。
おしるこちゃんのDJ体験
駅前の広場でごろんと空見上げられるのいいなぁ
人形も一緒にリラックス
Sofa
街の中にちょっと座れる場所があるって嬉しい
pnnikin
音のなる広場で、それぞれの過ごし方
体温が場所に残るとでも言えるような
- ところで、今回も盛り上がりましたね。
ですね。ホントになにかが盛り上がって来る感じで。
-あははは。
いや、ホントに。広場でスピーカーから流れる音が止まった後も、なんかこう、地べたの奥の方から音が湧き起こって上空に抜けていくかのようでした。その場にいる人たちの高鳴りも相まって。あー、えっと、老舗のライブハウスやクラブとかに行くと、文化的な歴史や重みを感じたりするじゃないですか。もう「におい」や「体温」とでも言うしかないようなものが場に蓄積されているような。
-確かにありますね。
で、文化みたいなことを考える時に、今回みたいな取り組みを続けていった先に、あの場にそういう「におい」や「体温」を残せていけるのかというのは考えちゃうんですよね。
-それはまあ、そうなのかもしれませんね。まあとにかく現場では、エスカレーターに乗っている人たちも一緒に盛り上がってくれていましたよね。海外からの旅行者らしき人も、通りすがりの人も音にどんどん引き寄せられていく感じで、あの場での一体感のようなものは確かにスゴかったですね。
DjやLiveがスゴかったということを前提に、音楽が持っている求心力みたいなものって、やっぱりありますよね。同時に、求心力や一体感のようなものがありつつも、みんながそれぞれバラバラというのも良くって。それぞれの踊り方というか、それぞれの場所の過ごし方があって良いということが体現されていて。
馬場正道
OMK(YOUNG-G、MMM、Soi48)
野外で裸足になるって気持ちいい
明文化できないもの
-それぞれの過ごし方と言ったら、子どもたちがのびのびと遊んでいる様子がなんとも微笑ましかったです。ミュージシャンのよだまりえさんやkacous limbaさん、そしてダンサーのタカダアキコさんが、子どもたちとセッションしているのも素敵でした。
たまたま生まれた状況でしたが、良い風景でしたよね。なんだかあたりまえのようになっていましたけど、綱引きにフラフープにお絵描きにと、いろんな遊びが生まれていました。その場で自分で自分の遊びをつくっていくことって、とても大切な気がします。これ、あれなんですよ。「その場で思わずそうなっちゃう」っていうのが大事で、それって、事前に言葉にしておけないんですよ。しておくべきでもないというか。
-「思わず」と言うことでは、演奏や楽器に引き寄せられて近づいていく子どもたちを、保護者の方は止めてましたよね。「ここでちゃんと見てなさい」って。
そうそう。親御さんとして、それは真っ当なことですし、運営サイドからしても心配りがありがたいです。その上で、よだまりえさんやkacous limbaさんをキュレーションしたミヤジこと宮﨑くんは「大丈夫、大丈夫」とする。子どもたちにとって、そういう音楽との出会い方は、とても素敵ですよね。その場に居合わせた人たちとリズムを合わせるというのはスゴいことですよ。結構、記憶の深いところに刻まれるというか。
-ある子が、kacous limbaさんのマラカスをお借りして鳴らしながら、「帰りたくない!」って叫んでました。
それ、聞いていました。次の予定を変更して、ずっと居てくれているご家族の方も多かったようです。そういう「たまたま」って、ほんと繊細なバランスや差配で成り立っていてですね、たとえば、アンプのつまみを子どもたちがいじろうとしていたら、「それはやめとこうか」みたいな一線はあるわけで。
-ああ。それが「見守る」ということなんですかね。
ですし、その「たまたま」を成り立たせているものが一体何なのか?というところが結構重要なはずで、その場で大人たちがそれぞれに、本当に大切にしたいものが何であるべきか?ということを考えたり感じ続けていないと、その「たまたま」は訪れないと思うんですよね。「必ずミュージシャンとセッションできます!」って宣伝するようなもんでもないし、100%の約束ができるもんでもない。それに、あれはオッケーでこれはダメみたいに箇条書きにして列挙してみんなで確認しておくというもんでもないじゃないですか。
-それはホントそうですね。
よだまりえ
Kacous limba
HI-Dの珍貴乗物に乗るディレクターの熊井さんを追いかける子
タカダアキコ
バレエの習い事帰りの子、たくさん遊んでいってくれたなぁ
果報は寝て待て
-やっぱり「果報は寝て待て」ってことですかね。
なんというか、もしも自分がその果報だったとするじゃないですか。
-はい???
言い換えたとして、「心を掴む」とか「雲を掴む」とか言うけど、その心とか雲の気持ちになってみるとですよ、掴まれたくないですよね。イヤですよね。掴みに来られたら。
-え?は?ああ、まあ。
自分がその果報だとか心だとか雲だとしたら、そう簡単に掴まれたくないですもん。掴みに手を伸ばしに来る人をすり抜けて、どこかに行ってしまいたい。
-ん?ああ、まあ。わかる気もします。
だから、やることをしっかりやって、あとはリラックスして、訪れを待つしかないんですよ。
-好運の訪れ。
好運だけじゃなくて、渡り鳥とか、なんかまあ色々。「やることをしっかりやって、あとはリラックスして、訪れを待つ」なんてことは結構あたりまえのことだと思うんですけど、やることはやらないし、やたらと力むばっかりで、アベコベなことって多いじゃないですか。力を入れるより、力を抜く方が大変なんですよ。
-ひょっとして怒ってるんですか?
え、いや、あの、そういえば、鳥って滑空している時って、はたから見たら気持ちよさそうですけど、力抜くところは抜きつつも、風を受け止める羽を支える筋肉はめちゃくちゃ頑張って働いているそうですよ。
音楽聴きつつ、オセロもしつつ
大階段の上ではSTONE63のライブペイント
奇声を発して暴れる坊や
AMOAKO食堂
渋谷川の源流を訪ねて
-今回は、広場を拠点に渋谷川の源流を訪ね歩いたりするフィールドワーク型のワークショップも開催されましたね。YUMEGIWA&Spiral Clubの「渋谷川のヌシについて思いを巡らせる散歩&ピクニック&ビオトープデコ&ビオトープづくり」と題して、明治神宮の方まで歩いたり、ビオトープをバージョンアップさせたりと、盛りだくさんだったようです。
これだけ「&」がたくさんつくワークショップの名称も珍しいでしょうね。
-あははは。
まあでも、一つのことを深めていったらそりゃ色々とつながっていくし、つなげていくべきでもありますよね。slow streamとしてはこの場所のことをやっぱりしっかり知っていきたいし、それと活動を紐付けていきたいところです。
-Spiral Clubによるビオトープは、引き続き一緒にメンテナンスをしたり環境について耳を傾け合ったりするメンバーを募集しているので、slow streamの開催日だけではなく、日々の風景にもみんなではたらきかけていきたいですね。
是非是非ですね。あとYUMEGIWAチームも、渋谷川の古層にかなりダイブしているのと、この周辺の土や微生物のリサーチも進めていて、もはや全貌がつかめない程に盛り上がっている様子です。なんかフィールドワークを終えた後も、「セレクトショップの地下に暗渠があって中を見れるらしいという情報が入りました!」って言葉を残して現地へと飛び立つメンバーもいました。
-スゴい。
全貌は掴めないんですが、きっとなんかスゴいことが起こりつつあるという感覚だけは分かるという。
-あははは。
というか、本人たちもその分からなさにいったん飛び込んでいるタイミングなんだと思うんで、それをいきなり「分かるように説明せい」とするのも野暮な話なんで。でもまあもうちょっとしたら、活動を紹介する言葉も熟していくと思うんで、活動のプロセスや全貌を広く紹介するトークなどもできたらと考えています。
-楽しみですね!
渋谷川の源流を辿る散歩で明治神宮へ
明治神宮苑内の「清正井」からはじまり、この神橋をくぐり、渋谷の街の道の下を流れる。
旧渋谷川遊歩道路の下を流れる川の流れに耳をすます
Spiral Clubによるビオトープづくりワークショップ
魚の観察
暗渠の下を流れてきた川を眺め、どんな川にしたらいいか言葉をかわす
ペンキも塗って、水も入れて、ビオトープが大きくなる。またトンボとかいろんな生き物がきてくれるといいなぁ
「牛への焼印」じゃない、ブランディング
-そろそろ最後にします。今回からまたデザイン面も推進体制も変わりましたが、その最初の頃に話をしていた「牛への焼印」じゃないブランディングへ、という話が面白かったです。
あの話はなんか今回のメンバーのなかでも評判が良かったですね。まあ、こんだけタイトルのロゴが変わっていたりと、デザインの印象がある意味安定しないことの、言い訳でもあるんですけどね。でも、ロゴをペタペタといろんなところに展開すればブランディングになるかと言うと、そうじゃないでしょうという想いは強くあります。
-それ、ちゃんとここでも解説しておきましょうよ。
ああ、えっと、ブランドという言葉って、検索するとたくさん出て来ると思いますが「牛などの家畜に捺した焼印」が語源なんですね。
-知らなかったです。
別にそれで良いと思うんですけど、たまに「その焼印で、他の所有者の家畜と区別しているわけで、だからブランドというものは、、、」と講釈を述べてくださる方がいるんですよ。
-そんな人いますか?
え、まあ、いらっしゃってですね。で、素直に思っていたのが、牛の気持ちに立ってみなさいよ、で。自分だったら、焼印を捺されたくないなって。ブランドというものをそういうことを起点としてあまり考えたくないなって思っちゃうんですよ。
-牛の気持ちになっちゃったんですね。
なっちゃったんですよ。それで、「動物福祉」というものを大切にしている、福岡県の大牟田市動物園のことを調べていたら、獣医師や飼育員さんが動物の意志を尊重している姿に胸を打たれてですね、焼印を捺す捺されるというものじゃない関係で、ブランディングということを考えたいと思った次第なんです。
-なんかよく分からないですけど、きっとそういう方向性で良いんだと思います、わたしたち。
G・K・チェスタトンっていうイギリスの作家だったり詩人だったりする人が、『正統とは何か』という書籍で、「われわれが欲しいのは、単に世界と折り合いをつけて生きていく力ではなくて、世界に勢いをつけて生かしていく力なのである」って言っていました。なんかまあ、今回は特にそういうことを感じた次第です。
グラフィックを担当しているsomedarappaのアニメーションが大階段に映し出されます
シールも配られました
ワンちゃんも遊びにきてくれました
Adwee Lalawee 2のパッタイ
reverse maker HI-D
なのはな苑の数秘術占い
- 執筆
熊井晃史
- 写真
立山大貴
- 校正
丹野暁江
- キャプション
菊池香帆